社会保険の月額変更処理(随時変更)、給与計算ソフトにより、いつもは簡単に判断できることが多いかと思います。一方、コロナウイルス感染症の拡大に伴う休業が発生すると、急に判定が難しくなります。特に、休業手当を本来の給与の100%(減額なし)を支払うのではなく、80%などとし減額して休業手当を支給する場合は、いつもとは違う判断が要求されるようになります。給与計算の担当者の中には、頭を抱えて悩んでしまう方もいらっしゃるのではないかと思っております。今回、休業がもたらす月額変更への対応について、ポイントをまとめてみました。
休業手当が支給された時の月額変更への諸対応
本来支給されるべき金額より減額されて、休業手当が支給された時には、月額変更に際して、通常の異なる取り扱いが要求されることがあります。
〇休業と基礎日数の関係
〇固定賃金が変動した月に休業手当が支払われている時にどうするか?
〇休業手当が継続して支給されていたらどうしたらよいのか?
〇休業が解消した場合はどうしたらよいのか?
コロナ感染症の拡大に伴い、よくある事例を中心に、対応方法をまとめてみました。
〇休業と基礎日数の関係
〇固定賃金が変動した月に休業手当が支払われている時にどうするか?
〇休業手当が継続して支給されていたらどうしたらよいのか?
〇休業が解消した場合はどうしたらよいのか?
コロナ感染症の拡大に伴い、よくある事例を中心に、対応方法をまとめてみました。
日本年金機構:標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集
① 休業とは??
一時帰休とも呼ばれます。労働者が労働契約に従って働けるにも関わらず、また働く意思があるにも関わらず、会社側が労働者を1日もしくは短時間にて、労働の提供をさせない(休ませる)ことを言います。その際には、会社は従業員に休業手当を支払わなくてはなりません。
② 月額変更の基礎日数計算における休業日数の取り扱い
基礎日数は、月額変更の判定の際に重要です。
一般的な社員の場合、各月に17日以上の基礎日数がないと(パートタイマーは除きます)、月額変更の対象にはなりません。
この基礎日数に、休業として休業手当が支給された日は、含まれます。
例 出勤数 14日 休業5日 この場合、14日+5日=19日として、基礎日数は扱われます。
一般的な社員の場合、各月に17日以上の基礎日数がないと(パートタイマーは除きます)、月額変更の対象にはなりません。
この基礎日数に、休業として休業手当が支給された日は、含まれます。
例 出勤数 14日 休業5日 この場合、14日+5日=19日として、基礎日数は扱われます。
③ 休業手当が本来の給与の100%支給(減額なし)の場合と、減額されて休業手当を支給される場合
雇用調整助成金を活用する場合、休業手当は100%支給されることが多いです。このように、休業手当が減額されない場合は、本来の給与が支給されていると判断されます。よって、原則的には、いつも通りに月額変更を判断して問題ありません。
しかし、本来の賃金の8割とか、9割支給の場合は、④以降の対応が必要になります。
しかし、本来の賃金の8割とか、9割支給の場合は、④以降の対応が必要になります。
④ 固定的賃金が変動した時に休業手当が支給された、もしくは、休業が以前から継続して支給されている時に固定的賃金の変動が変動した
※休業手当が本来の金額より減額されて支給される場合(以後、同様とします)
固定的賃金が変動した時に、本来より減額された休業手当が1日でも支給されている場合、月額変更による変動が正確に報酬月額に反映されていないと考えられます。よって、休業手当が支給されなくなった月から起算して3か月の報酬を平均することにより、月額変更がなされます。
具体的に見てみましょう。
このように、2月で固定給の変動があるので、通常であれば、2月3月4月の報酬を平均し、2等級の差が生じれば5月の月額変更となります。しかし、休業手当が支給されているので、2月が起算月とはなりません。休業手当が支給されなくなってからの月額変更となります。この場合は、4月において休業手当が支給されなくなったので、4月を起算月として、月額変更がなされます。
固定的賃金が変動した時に、本来より減額された休業手当が1日でも支給されている場合、月額変更による変動が正確に報酬月額に反映されていないと考えられます。よって、休業手当が支給されなくなった月から起算して3か月の報酬を平均することにより、月額変更がなされます。
具体的に見てみましょう。
このように、2月で固定給の変動があるので、通常であれば、2月3月4月の報酬を平均し、2等級の差が生じれば5月の月額変更となります。しかし、休業手当が支給されているので、2月が起算月とはなりません。休業手当が支給されなくなってからの月額変更となります。この場合は、4月において休業手当が支給されなくなったので、4月を起算月として、月額変更がなされます。
⑤ 固定的賃金が変動した翌月に、休業手当が支給された場合の取り扱い
固定的賃金が変動した当月は、休業手当が支給されておらず、その後3か月で2等級の変動が発生するとします。固定的賃金が変動した翌月に休業手当が支給された場合ですが、この場合は起算月の変更は起こりません。そのままです。
上図のように、2月を起算月とした、5月での月額変更がなされます。
上図のように、2月を起算月とした、5月での月額変更がなされます。
⑥ 減額された休業手当が3か月支給された場合
減額された休業手当が支給されることは、固定給の変動とみなされます。これが3か月継続すると、固定給の変動とみなされ、随時変更の対象になります。
このように、2月から休業が発生し3か月継続したので、2月3月4月の支給額により月額変更が検討されます。2等級以上発生すれば、月額変更が発生します。
このように、2月から休業が発生し3か月継続したので、2月3月4月の支給額により月額変更が検討されます。2等級以上発生すれば、月額変更が発生します。
⑦ 休業による月額変更後、休業が解消された場合
⑦の事例のその後についてです。
休業手当が支給されない月が3か月を超え、2等級以上の差が生じた場合には、休業が解消されたものとみなされ、月額変更の対象になります。
6月7月8月給与において、休業が発生しませんでした。休業手当を支給されない月が3か月継続したので、6月7月8月の給与の平均をもって、9月度の月額変更が発生します。
休業手当が支給されない月が3か月を超え、2等級以上の差が生じた場合には、休業が解消されたものとみなされ、月額変更の対象になります。
6月7月8月給与において、休業が発生しませんでした。休業手当を支給されない月が3か月継続したので、6月7月8月の給与の平均をもって、9月度の月額変更が発生します。
⑧ 休業手当の支給率が変更となった場合
月額変更の対象になります。3か月経過してから、月額変更の有無を判定いたします。
例えば、2月から4月の休業手当の支給率が90%でしたが、その後、5月から60%に支給率が低下した場合、5月を起点に休業による月額変更の有無を検討する必要がございます。
例えば、2月から4月の休業手当の支給率が90%でしたが、その後、5月から60%に支給率が低下した場合、5月を起点に休業による月額変更の有無を検討する必要がございます。
⑨ 最後に
以上、私自身が過去に間違えそうになったところを中心に、ポイントをまとめてみました。今後の業務の参考になればうれしいです。
なお、今回割愛しておりますが、基礎日数が不足していれば月額変更は発生しないこと、固定的賃金が増加した時は増加月額変更、減少した時には減少の月額変更のみ発生するという基本ルールはもちろん適用されます。また、休業による特例月額変更も割愛しておりますので、また別の機会に紹介したいと思います。
なお、今回割愛しておりますが、基礎日数が不足していれば月額変更は発生しないこと、固定的賃金が増加した時は増加月額変更、減少した時には減少の月額変更のみ発生するという基本ルールはもちろん適用されます。また、休業による特例月額変更も割愛しておりますので、また別の機会に紹介したいと思います。