賞与支給時に間違えやすい社会保険料・雇用保険料のポイント
2026/07/16
賞与支給時に間違えやすい社会保険料・雇用保険料のポイント
~給与担当者が確認したい6つの注意点~
はじめに
賞与を支給するときは、毎月の給与とは異なる計算や届出が必要です。
特に間違えやすいのが、
- 賞与支払届の提出
- 社会保険料と雇用保険料の計算
- 介護保険料の対象者
- 産休・育休中の保険料免除
- 退職者に支給する賞与
- 年4回以上支給する賞与
です。
賞与は年に数回しか処理しないため、前回と同じ方法で計算したつもりでも、従業員の年齢や休業状況、退職日によって取扱いが変わることがあります。
今回は、賞与支給時に特に注意したい6つのポイントを解説します。
1.賞与支払届は支給日から5日以内
健康保険・厚生年金保険の被保険者や70歳以上被用者へ賞与を支給した場合は、原則として支給日から5日以内に「被保険者賞与支払届」を日本年金機構へ提出します。
対象となるのは、名称にかかわらず、労働の対償として年3回以下支給されるものです。
夏季賞与や冬季賞与だけでなく、決算賞与や業績手当なども対象になることがあります。
また、日本年金機構に登録している賞与支払予定月に、対象者全員へ賞与を支給しなかった場合は、「賞与不支給報告書」の提出が必要です。
「支給しなかったから何もしなくてよい」と判断しないようにしましょう。
2.社会保険料と雇用保険料では計算方法が違う
賞与には原則として、
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
- 介護保険料
- 雇用保険料
がかかります。
ただし、社会保険料と雇用保険料では、計算の基礎となる金額が異なります。
健康保険料・厚生年金保険料は、税引き前の賞与額から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に保険料率を掛けて計算します。
例えば、賞与の総支給額が300,800円の場合、標準賞与額は300,000円です。
一方、雇用保険料は、原則として賞与の総支給額に雇用保険料率を掛けて計算します。社会保険のように1,000円未満を切り捨てる処理は行いません。
給与計算ソフトを利用している場合も、対象年度の保険料率が正しく登録されているか確認しましょう。
3.40歳・65歳到達者の介護保険料に注意
介護保険料は、原則として40歳以上65歳未満の健康保険加入者が対象です。
ここで注意したいのが、法律上、年齢に到達する日は「誕生日の前日」となることです。
例えば、5月1日生まれの人は4月30日に40歳へ到達するため、4月分から介護保険料の対象になります。
反対に、65歳へ到達する月からは、健康保険料と一緒に徴収する介護保険料の対象外となります。
賞与を支給する際は、単純に「今月が誕生月か」だけで判断せず、誕生日の前日となる到達日がどの月に属するかを確認しましょう。
4.産休・育休中でも必ず免除されるとは限らない
産前産後休業や育児休業中であっても、会社の規程に基づいて賞与を支給することは可能です。
産前産後休業中で、社会保険料の免除期間に該当する月に賞与を支給した場合は、その賞与にかかる健康保険料・厚生年金保険料も免除されます。
一方、育児休業中の賞与保険料が免除されるのは、賞与支払月の末日を含む、連続した1か月を超える育児休業等を取得している場合です。
毎月の給与にかかる保険料では、同じ月の中で14日以上育児休業を取得した場合に免除されることがありますが、この14日要件は賞与には適用されません。
また、社会保険料が免除される場合でも、賞与支払届は必要です。
雇用保険料には、産休・育休を理由とした同様の免除制度はありません。賞与が労働の対償に当たる場合は、原則として雇用保険料の対象です。
5.退職者への賞与は「退職日」と「支給日」を確認
退職者へ賞与を支給する場合は、月途中退職か月末退職かによって社会保険料の取扱いが異なります。
月の途中で退職した場合、退職日の翌日が資格喪失日となるため、退職月は資格喪失月になります。その月に支給した賞与は、原則として社会保険料の対象外です。
ただし、退職日以前に支給した賞与は、社会保険料がかからない場合でも賞与支払届が必要です。
一方、月末に退職した場合は、資格喪失日が翌月1日となります。そのため、退職月に支給した賞与は社会保険料の対象になります。
資格喪失後に賞与を支給した場合は、社会保険の賞与支払届や保険料の対象にはなりません。
雇用保険については、支給日だけで一律に判断できません。在職中の労働の対償として支給が決まっていた賞与か、退職後に新たに支給が決定されたものかなど、支給の根拠を確認する必要があります。
6.年4回以上支給するものは「賞与」ではなくなることがある
社会保険では、原則として年3回以下支給されるものを賞与として扱います。
一方、就業規則や賃金規程などで、年間を通じて4回以上支給することが客観的に定められているものは、原則として「賞与に係る報酬」として標準報酬月額の対象になります。
その場合、通常の賞与のように、その都度賞与支払届を提出して保険料を計算するのではなく、毎月の社会保険料を決める報酬に含めて処理します。
「賞与」「業績手当」「決算手当」など、名称が違っていても同じ性質を持つものは、支給回数を合わせて判断することがあります。
また、年度途中で支給回数や規程を変更した場合は、すぐに報酬扱いへ切り替わるとは限りません。個別に取扱いを確認しましょう。
賞与支給前のチェックリスト
賞与を支給する前に、次の項目を確認しておきましょう。
- 賞与支払届の提出対象者を確認したか
- 賞与不支給報告書が必要ではないか
- 社会保険料と雇用保険料の計算方法を分けているか
- 40歳・65歳到達者を確認したか
- 産休・育休中の従業員の免除要件を確認したか
- 月途中退職者・月末退職者がいないか
- 年4回以上支給する賞与ではないか
まとめ
賞与支給時は、毎月の給与とは異なるルールが適用されます。
特に、
- 賞与支払届は原則5日以内
- 社会保険料は標準賞与額で計算
- 雇用保険料は総支給額で計算
- 介護保険料は誕生日の前日となる到達日で判定
- 育休中の賞与免除には1か月超の要件がある
- 月途中退職と月末退職では取扱いが異なる
- 年4回以上の賞与は報酬扱いとなる場合がある
という点を押さえておく必要があります。
賞与支給前に対象者の年齢、休業期間、退職日、社会保険資格を確認することで、届出漏れや保険料の徴収ミスを防ぎやすくなります。
当事務所では、賞与支払届の作成・提出や、賞与にかかる社会保険料・雇用保険料の確認などを行っております。
賞与支給時の取扱いに不安がある場合は、お気軽にご相談ください。
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