従業員から家族の介護相談を受けたら?
2026/08/17
従業員から家族の介護相談を受けたら?
会社が説明すべき制度と実務対応のポイント
はじめに
従業員から、
「親の介護が必要になりそうです」
「仕事を続けながら介護できますか」
「どのような休業や休暇がありますか」
と相談を受けることがあります。
2025年4月からは、介護離職を防ぐため、介護に直面した従業員への個別周知・意向確認、40歳前後の従業員への情報提供、制度を利用しやすくするための雇用環境整備が事業主に義務づけられました。
制度改正から1年以上が経過した2026年は、規程を改定しただけでなく、実際に相談を受けた際に適切な案内ができるかを確認したい時期です。
今回は、従業員から家族の介護について相談を受けた場合に、会社が説明すべき制度と対応のポイントを整理します。
介護の相談を受けたら、まず状況を確認する
従業員から相談を受けた際、いきなり「介護休業を取りますか」と聞くのではなく、まずは次の点を必要な範囲で確認します。
- 誰の介護が必要なのか
- どのような支援が必要なのか
- 一時的な対応か、長期化する可能性があるのか
- 本人が休業、休暇、残業免除、短時間勤務などのうち、何を希望しているのか
育児・介護休業法上の制度は、原則として「要介護状態にある対象家族」を介護する場合に利用できます。
対象家族には、配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫が含まれます。
また、介護保険の要介護認定を受けていなくても、法令上の要介護状態に該当することがあります。
会社が病状や家庭事情を必要以上に聞き出す必要はありません。利用できる制度を案内するために必要な範囲で確認しましょう。
個別周知・意向確認が必要
2025年4月以降、従業員から対象家族の介護に直面した旨の申出があった場合、会社は介護休業や介護両立支援制度等について個別に周知し、制度を利用する意向を確認しなければなりません。
会社が個別に周知する事項は、次のとおりです。
- 介護休業や介護両立支援制度等の内容
- 各制度の申出先
- 介護休業給付金に関する事項
個別周知と意向確認は、面談または書面の交付により行います。従業員が希望した場合は、FAXや電子メール等によることもできます。
その際、
「今は忙しいから休業は避けてほしい」
「長く休むなら退職も考えてほしい」
など、制度の利用をためらわせるような対応をしてはいけません。
会社は制度を説明したうえで本人の利用意向を確認し、申出があった場合は、法令や自社の規程に沿って手続きを進めます。
会社が説明すべき主な制度
1.介護休業
介護休業は、対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として分割取得できる制度です。
従業員本人が長期間にわたって介護のすべてを担うことだけを想定した制度ではありません。介護サービスの手配や家族内の役割分担など、仕事と介護を両立する体制を整えるためにも活用できます。
一定の要件を満たす雇用保険の被保険者には、介護休業給付金が支給される場合があります。
2.介護休暇
対象家族が1人の場合は1年間に5日、2人以上の場合は1年間に10日まで介護休暇を取得できます。
原則として1日単位または時間単位で取得でき、通院の付き添いや介護サービスの手続きなどに利用できます。
介護休暇中の賃金を有給とするか無給とするかは、会社の規程によります。
3.残業や深夜勤務の制限
要介護状態にある対象家族を介護する従業員は、一定の要件を満たす場合、会社に請求することにより、所定労働時間を超える残業の免除を受けられます。
また、法定時間外労働を月24時間・年150時間以内に制限する制度や、午後10時から午前5時までの深夜勤務を制限する制度もあります。
4.短時間勤務等の措置
会社は、要介護状態にある対象家族を介護する従業員について、次のうちいずれか1つ以上の措置を設ける必要があります。
- 短時間勤務制度
- フレックスタイム制度
- 始業・終業時刻の繰上げまたは繰下げ
- 介護サービス費用の助成など
会社によって導入している制度は異なるため、自社の育児・介護休業規程を確認したうえで案内しましょう。
また、2025年4月からは、要介護状態にある対象家族を介護する従業員がテレワーク等を選択できるよう、会社が措置を講じることも努力義務となっています。
40歳前後の従業員への情報提供
2025年4月からは、従業員が実際に介護へ直面する前の段階で、介護休業や介護両立支援制度等について情報提供することも義務となりました。
情報提供を行う時期は、次のいずれかです。
- 40歳に達する日が属する年度
- 40歳に達する日の翌日から1年間
介護は病気や事故をきっかけに突然始まることがあります。
相談があってから初めて説明するのではなく、40歳前後の従業員に対し、社内制度や申出先、介護休業給付金などを事前に案内しておくことが重要です。
制度を利用しやすくするための環境整備
会社は、介護休業や介護両立支援制度等を利用しやすくするため、次のいずれかの措置を講じる必要があります。
- 介護休業などに関する研修の実施
- 相談体制の整備
- 自社での制度利用事例の収集・提供
- 制度利用を促進する会社方針の周知
就業規則に制度が書かれていても、従業員が申出先を知らなかったり、上司が制度を理解していなかったりすれば、実際の利用にはつながりません。
相談を受ける管理職や担当者にも、制度の概要と対応方法を周知しておきましょう。
会社が準備しておきたいもの
実際に相談を受けてから慌てないよう、少なくとも次のものは準備しておきましょう。
- 個別周知・意向確認書
- 40歳前後の従業員への情報提供資料
- 介護休業や介護休暇の申出書
- 相談窓口と社内の対応手順
厚生労働省では、個別周知・意向確認書や40歳時の情報提供資料などの記載例を公開しています。自社の制度や申出先に合わせて整備しておくと安心です。
まとめ
家族の介護に直面した従業員から相談を受けた場合、会社は介護休業だけでなく、介護休暇、残業免除、短時間勤務などの制度を案内し、本人の利用意向を確認する必要があります。
2025年4月の法改正により、会社には、
- 介護に直面した従業員への個別周知・意向確認
- 40歳前後の従業員への情報提供
- 制度を利用しやすくするための雇用環境整備
が義務づけられています。
規程を改定しただけで終わらせず、担当者が制度を説明できるか、必要な書類が準備されているか、従業員が相談窓口を知っているかまで確認しておきましょう。
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