試用期間なら簡単に解雇できる?会社が勘違いしやすいポイント
2026/09/07
試用期間なら簡単に解雇できる?会社が勘違いしやすいポイント
はじめに
新しく従業員を採用する際、「まずは3か月の試用期間を設けて、合わなければ辞めてもらおう」と考える会社もあるかもしれません。
しかし、ここで注意が必要です。
「試用期間中なら会社の判断で簡単に解雇できる」という考え方は正しくありません。
試用期間中であっても、すでに会社と従業員との間には労働契約が成立しています。そのため、「思っていた人材と違った」「仕事を覚えるのが遅い」といった理由だけで、自由に解雇できるわけではありません。
今回は、会社が勘違いしやすい試用期間と解雇のルールについて解説します。
1.そもそも「試用期間」とは?
試用期間とは、採用した従業員について実際に働いてもらいながら、
- 業務を行う能力があるか
- 勤務態度に問題がないか
- 会社の仕事への適性があるか
などを確認するために設ける期間です。
一般的な試用期間は、単なる「お試し雇用」ではありません。
判例上、一般的な試用期間は、会社側に一定の解約権が留保された労働契約、いわゆる「解約権留保付労働契約」と考えられています。
つまり、試用期間中であっても、入社初日から従業員として労働契約が成立しているということです。
2.試用期間なら普通の社員より簡単に解雇できる?
試用期間は従業員の適性を判断するための期間であることから、通常の解雇と比べると、本採用拒否などが認められる範囲は一定程度広いと考えられています。
ただし、会社が自由に判断できるわけではありません。
最高裁判例では、試用期間中の解約権の行使について、試用期間を設けた趣旨・目的に照らし、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合に限って許されるという考え方が示されています。
例えば、
- なんとなく会社に合わない
- 社長と性格が合わない
- 期待していたほど仕事ができなかった
といった抽象的な理由だけでは、本採用拒否の根拠として十分とはいえない場合があります。
一方で、採否の判断に重要な影響を及ぼす経歴について虚偽が判明した場合や、繰り返し具体的な指導を行っても重大な勤務上の問題が改善されない場合などには、事情によって本採用拒否等の合理性が認められる可能性があります。
重要なのは、会社の主観ではなく、客観的な事実に基づいて説明できるかどうかです。
3.「入社14日以内なら自由に解雇できる」は間違い
試用期間について特に誤解されやすいのが、「14日ルール」です。
労働基準法では、試用期間中の従業員について、雇入れから14日以内であれば、原則として30日前の解雇予告や解雇予告手当の規定が適用されません。
しかし、これは、
「14日以内なら理由なく自由に解雇できる」
という意味ではありません。
14日以内の場合に不要となるのは、あくまで労働基準法上の解雇予告や解雇予告手当です。
解雇そのものについては別問題であり、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められなければ、無効となる可能性があります。
会社側としては、「14日以内だから大丈夫」と安易に判断しないことが重要です。
4.14日を超えたら解雇予告も必要
雇入れから14日を超えて引き続き使用している場合には、試用期間中であっても通常の解雇予告のルールが適用されます。
原則として、少なくとも30日前に解雇を予告する必要があります。
30日前に予告しない場合には、30日分以上の平均賃金を解雇予告手当として支払う必要があり、例えば10日前に予告した場合には、不足する20日分の平均賃金を支払うといった方法もあります。
そのため、
「3か月の試用期間だから、3か月目の最終日に本採用しないと伝えればよい」
というわけではありません。
また、解雇予告手当を支払えば解雇そのものが有効になるわけでもありません。
「解雇する合理的な理由があるか」と「解雇予告の手続きを適切に行っているか」は、それぞれ別の問題として考える必要があります。
5.試用期間満了=自動的に退職ではない
「試用期間3か月」と定めている場合、
「3か月経った時点で、会社が本採用するかどうか自由に決められる」
と誤解されることがあります。
しかし、一般的な試用期間では、期間が満了したからといって労働契約が自動的に終了するわけではありません。
本採用を拒否するということは、すでに成立している労働契約を会社側から終了させることになります。
そのため、
「試用期間が終わったから」
という理由だけでは、本採用拒否の十分な理由にはなりません。
6.問題がある場合は「記録」と「指導」が重要
会社側の実務として特に重要なのが、試用期間中の勤務状況を具体的に記録しておくことです。
例えば、
- 遅刻や欠勤の日付・回数
- 業務上の具体的なミス
- 業務指示に従わなかった事実
- 本人へ行った指導の内容
- 改善を求めた日時
- 指導後に改善が見られたか
などを記録しておきましょう。
「勤務態度が悪い」「能力不足だった」といった抽象的な評価だけでは、後になって本採用拒否の理由を説明することが難しくなります。
問題がある場合には、その内容を本人へ具体的に伝え、改善の機会を設けたうえで、その経過を記録しておくことが重要です。
7.試用期間は簡単に延長できる?
能力や適性を十分に判断できなかった場合に、試用期間の延長を考える会社もあります。
しかし、会社の判断だけで自由に延長できるわけではありません。
試用期間を延長するためには、原則として就業規則などに延長の根拠が必要です。
また、延長することができる旨の規定があれば、いつでも自由に延長できるというわけでもありません。
従業員の適性を判断するために延長する合理的な理由があるか、延長する期間が必要な範囲にとどまっているかなどを確認する必要があります。
試用期間中の従業員は、本採用されるかどうかという不安定な立場に置かれます。
そのため、
「まだ判断できないから、とりあえず3か月延長しよう」
といった安易な運用は避けた方がよいでしょう。
まとめ
試用期間について、会社側が特に押さえておきたいポイントは次のとおりです。
- 試用期間中でも、すでに労働契約は成立している
- 試用期間だから自由に解雇できるわけではない
- 本採用拒否には、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められることが必要
- 「入社14日以内」は解雇自由という意味ではない
- 14日を超えれば原則として解雇予告等も必要
- 試用期間満了だけを理由に自動的に退職とはならない
- 問題がある場合は具体的な指導と記録を残す
- 試用期間の延長にも根拠と合理的な理由が必要
試用期間は、会社が従業員を自由に辞めさせるための期間ではなく、実際の勤務を通じて能力や適性を確認するための期間です。
「合わなければ試用期間で辞めてもらえばいい」と安易に考えていると、本採用拒否や解雇をめぐる労務トラブルにつながる可能性があります。
試用期間を設ける場合は、期間や本採用の判断基準、延長の取扱いなどを就業規則や雇用契約書で明確にし、実際の運用についても事前に確認しておくことが大切です。
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